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21世紀セミナーレポ シリーズ7 講演抄録末竹和彦先生講演 「財産」の生かし方が努力の成果を左右する(2)

「目標」と「ビジョン」

 「目標」と「ビジョン」という言葉がありますが、「ビジョン」は、あなたの願望の全体図であり、あなたを望む方向に導くコンパスの役割をします。あなたの高遠な志を大づかみにしたものであり、『いつの日か』という含みを持っています。それに対して、「目標」には具体性、期限があります。特定的です。的が絞られています。さらに測ることができます。「目標」にはあなたを現実の世界に結びつけ、望みを具体的結果に変える手法を与えることができる。つまり「目標」は「ビジョン」の『いつの日か』という言葉を『今日』に変えるものなのです。
 では、具体的にどのような目標が価値あるものなのでしょうか。それは『かしこい目標』です。どういうことか?

  • S:Specific・・・具体的であること
  • M:Measurable・・・測定可能なこと
  • A:Attainable・・・実現可能なこと
  • R:Realistic・・・現実的なこと   そして
  • T:Time-based・・・時間の基準があること(いつまでにという期限を設定すること)

 これらの頭文字をつなげるとSMART(スマート)な目標、日本語で『かしこい』目標となるわけです。この5つを満たすものであれば大変価値が高く、短期、中期、長期さらに最終的な目標を設定する場合によい指針となるはずです。「目標」のまとめでかの有名なポール・J・マイヤーの言葉をかみしめてみてください。
  『人生は価値ある最終目標を設定し、それに向かい段階的に成功を重ねていくものである。』
たいへん含蓄のある言葉で、まさに真実であります。
 以前、Together誌のあるコーナーに歯科医院経営を成功に導くためにということで、端的に言い表している言葉がありました。その前半の部分に
『歯科医院経営をうまくいかせるために、乱暴な言い方だが、お金を得るためには頭を使うか、体を使うしかない。歯科医院経営では当然両方を使わなければならない。長時間労働と効率的診療で増収の道はいくらでもある。』とあります。いちいちもっともなことですが、長時間労働、日曜・休日出勤というのは大変ですから、私は「効率的診療」を選びたいと思います。問題はいかに多くの患者さんに来てもらうか。あまりに多くの患者さんに来てもらっても、一人あたりの診療時間が少なくなり過ぎて良い治療をするには問題がある。また、そんなにたくさん診ていて、良い治療ができるわけないじゃないかと言われることもありますが、私は若手の先生に「患者さんの数は、その先生、あるいはその歯科医院のトータルな実力をシンプルに現したものだよ。」と言います。いかにレベルの高い治療をしていても1日の来院患者数が10人弱であるとか、点数があまりに少なければ、経営は立ちゆかない。経営が順調でなければ優秀なスタッフも確保できない。必要なハードがあるのにそれも購入できない。結果、医療サービスの低下を招き、さらに来院数が落ちてくるという典型的な悪循環となります。これを断ち切るために、まず患者さんに医院のドアを開けてもらわなければならないし、収益を上げなければならない。これは厳然とした事実なのです。つづいてTogether誌掲載文の後半部分ですが『問題はいかに多くの患者さんに来てもらうか。商売の相手たる患者さんなくしては何も始まらない。そのために必要なことは何か?要は人の心をとらえること。だから、成功・繁栄の第一は、そのためになすべきことを尽くせばよい。』というものです。さらに端的に、全商売で通じる言葉が『商売のコツは、相手が何を欲しているかを知り、それに応えていくことだ。これだけである。』です。私たち開業医は歯科医療サービスという【商品】を売ってその報酬をいただくという【商売】をしているということをはっきりと自覚しなくてはなりません。講習会・研修会でハイレベルな歯科医療技術をマスターしたからといって、患者さんのニーズに合致しなければ施術できないわけです。【お客】という感覚を持ち、やることはすべてお客の方を向いている。歯科医院経営は『今、目の前にいる患者さんが何を欲しているかを理解し、十分な誠意と技術をもって歯科医療サービスという形で答えていく。』ことができれば成功するのです。
 私のように田舎から来ている者であっても、都会の歯科医院過密地区で開業されている先生であっても、この事実は変わりません。やり方は無限にあると思います。その先生その先生の置かれた立場、環境、患者さんのニーズを考慮して、将来的にどういう戦略を立てていくかが大事になりますが、これをお手伝いできるのが先ほど(Together誌1・2月号参照)説明したシートです。大いに利用して頂きたいと思います。「(技術的に)良い治療をしていれば患者さんは来院してくれる」時代はすでに終焉を迎えてしまいました。今後は治療技術・スタッフ・設備・材料に関してハイクオリティーが求められます。いわゆる、GOOD TECHNIQUE GOOD STAFF GOOD MATERIAL を追求していかなければならないのです。言うことは簡単ですが、万遍なくハイクオリティーを極めるというのは非常に困難で、最近、つくづく歯科医はやるべきことがあまりにも多すぎると感じています。

成功の条件

 成功するためには・・・、知識を振りかざしているうちは、成功者の仲間入りを果たすことはできません。「大学の成績がトップだった先生方はなぜか大成できない」と聞くことがあります。それが事実かどうかは別にして、確かなことは「優れた臨床家」となるためには【知識】よりも【知恵】をもつように努力しなければならない、ということです。では【知恵】とは何か?“知恵とは何事に対しても疑問を持つこと”またその疑問も「なぜうまくいかなかったか」よりも「なぜうまくいったか」と考える方が随分進歩が早いように思います。
 船井総研の船井幸雄氏が書かれた本からの抜粋で、そのまま歯科医院に当てはまるかわかりませんが、「成功の70%が約束される条件」ということで、

  1. 勉強好き
  2. 素直
  3. プラス発想

が挙げられています。全体的にポジティブな人が成功する確率が高いことが容易に想像できますが、ネガティブ発想の人をポジティブな方向に向かわせることはなかなか難しいことです。一つに自己啓発プログラムを取り入れるという方法があります。当院でも「LMI」というプログラムを医院全体で採用していますが、一人では3日坊主になってしまうのでインストラクターにお手伝いをお願いしています。先ほどの3つの条件をまとめると要するに『天職発想』ができることが大事だということです。では天職とは何でしょう。それは「お金儲けとは関係ない、とにかく自分がやりたくて仕方がない仕事のこと」(先月号Together誌ではお金が大事だといいましたが、天職という意味でとらえた場合お金とは関係がないということになります)だということです。
 次にもう少し的を絞り「仕事と人生が大きくなる大原則的コツ5箇条」を考えてみましょう。

1)単純化して考え、単純に行動しよう。
2)長所を伸ばそう。
3)プラス発想。
4)人を喜ばせよう。
5)恨まれることはしないでおこう。

これも船井総研の本から抜粋したものです。

1)単純化して考え、単純に行動しよう。
ポール・J・マイヤー氏は「いかに挑戦的で刺激的な目標を設定しても、行動に移さない限り、その目標は漫然とした夢の領域を出ない」と言っています。また「知識や才能がなくて失敗するのではない。失敗する主な原因は行動しないことにある」とも言われます。例えて言うと、アイディアと行動はパソコンのソフトとハードのようなものです。そのどちらかが欠けていれば、パソコンは全く使い物になりません。戦略は立てた。きちんとした賢い(SMART)目標も立てた。いざ、行動だというときに、「あーだるいなー」では何にもならない。パソコンもただの粗大ゴミです。さらにポール・J・マイヤー氏は「専門家によると自分の潜在能力を開発しようとするのはわずかに10人に1人である。大部分の人は成長や成功を望んでも、それを実現するために必要なわずかに余分な努力をすることを嫌う。」と書いています。先生方は「だるいなー」−経験がありませんか。たまになら良いのですがいつもではまずい。肝に銘じておかなければならないのは、約束を守らなければならない一番大事な相手は「自分」だということです。自分に「やろう」と約束したら「やる」のです。自分との約束を守ることができる先生が院長の歯科医院の将来は明るいといえます。
2)長所を伸ばそう。
長所を伸ばしていけば、そのうちに短所は隠れてきます。例えば、コップに濁った水があるとしましょう。その中にきれいなコインを1つずつ入れていけば汚い水はあふれ出し、どんどん無くなっていく。濁った水=短所、きれいなコイン=長所と考えて頂ければわかりやすいと思います。スタッフの能力を伸ばす時に、長所に注目をすべきですし、先生方の歯科医療技術にしても得意なところから力を入れていくのがよい。デンチャーが好きであれば、まずそれをグッと伸ばす。あるレベルまで達したら、次の課題を探すのです。「デンチャーは少し自信ができた。だけど、デンチャーはどんなにがんばっても自分の歯にはかなわないな。できるだけ歯を保存するためにエンドが得意になる必要があるし、エンドには麻酔がつきもの。やっぱり麻酔も上手じゃないと」という具合です。
3)プラス発想。
4)人を喜ばせよう。
5)恨まれることはしないでおこう。
嫌いな患者さんをつくらないことも非常に大事なことです。こちらが嫌いだと思うと相手も異様な雰囲気を察知し、良い関係は築けません。生理的に拒絶してしまうタイプがあることはわかりますが、仮に相手が好ましくない態度をとったにしても少なくとも平常を装うのです。いわゆる「オール肯定」と「カガミの理」です。

小さな成功体験で「勝ち癖」をつける

 小さな、ほんの些細なことでもよい、うまくいったという経験がその後の「伸び」を決定づけます。スタッフの教育もいきなり大きな仕事に放り込むようなことをしないで、簡単なところで成功する体験を積ませていきます。この「勝ち癖」をつけると、後は急カーブを描いて能力が向上します。先生方の能力も同じです。新しい治療に挑戦しようとする時、はじめの一歩は大変なエネルギーを要するもの。これを乗り越えてトライした時に、たたきのめされるような失敗をしたならば、その後この治療を避けるような治療計画を立てるようになるでしょう。ちょっとしたニュアンスの違いですが、「失敗をしない」ということではありません。小さな失敗は、これを教訓に成長する糧とすることができます。「失敗はしない」の『は』は、精神的に打撃を受けるようなことをしないという意味があります。成長を促すためには、少なくとも失敗の回数よりも成功したと自覚できる体験を多く積むことが大切なのです。
 また伸びる人、伸びる先生、伸びる歯科医院は「ついている」と言われますが、その通りだと思います。一度成功し始めたら本当にどんどんついてくる。そういう歯科医院には優秀な人々が集まってくる(例えば外注技工所、ディーラー)し、最終的によいスタッフも集まってきます。私の場合、現在地で開業を計画した時、半年前から衛生士学校やハローワークに衛生士の求人票を提出していたのですが全く音沙汰なしでした。今考えると無理もありません。衛生士学校の先生も成功するとも失敗するともつかない歯科医院に大事な教え子の将来を託したくはないでしょう。一旦、この歯科医院では衛生士としてやりがいを感じる仕事をさせてもらえるとわかったあとは、優秀な人材をどんどん紹介して頂けるようになりました。
 伸びる先生、歯科医院はすばらしい人脈で周りを固められています。反対に、ついていない先生の周りにはネガティブなスパイラルができあがってます。冷たいようですが、ついていない先生と傷をなめ合うようなおつきあいはしない方がよいと思います。成功している先生とおつきあいをしてポジティブなパワーを分けてもらいましょう。

[構成 編集部]