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21世紀セミナーレポ シリーズ7 講演抄録末竹和彦先生講演 「財産」の生かし方が努力の成果を左右する(1)

 おはようございます。本日は北海道から九州まで全国の先生方にご参集いただきありがとうございます。
 今日は皆さんに経営に関してのみならず、末竹歯科医院のシステムを多くみていただけたらと思っています。
 私が開業しています長崎県松浦市は人口2万2千強の過疎化傾向にある町です。これといった企業はないのですが、「どのようなところですか?」と聞かれれば、すかさず「大きな魚市場があり、アジの水揚げが日本一です」とお答えします。

末竹歯科医院紹介

 それでは本題に入る前に当院の紹介をさせていただきます。横浜で分院長をしていた経験から、どんなにがんばっても1日30人の患者さんしか診ることができないだろうと思っていましたので、医院の設計段階でチェアー3台、スタッフ3人、技工はすべて外注、また本格的な矯正治療を行う予定がありませんでしたので、コンパクトなレントゲン室にデンタルとパノラマの撮影機のみという、いわゆる『小さくまとまった』歯科医院でスタートしました。十分に戦略を立てた夢のある歯科医院建設ではなく、経験のみから自分の頭の中で「天井」「限界」を決めてしまっていたことを記憶しています。開業して7年経った時、医業が頭打ちというわけではなかったのですが、10年先の歯科医院経営を考え、悪くなったらその部分のみ修復していく通常の保険治療(悪く言えばモグラたたき治療)から脱却しなければ明るい未来はないと思い、まだたくさんの借金が残っているにもかかわらず医院の増改築を2年前に行いました。旧医院に接していた古い建物をすべてつぶして、最終的には延べ坪で100坪を誇る非常に贅沢なものになりました。予防・歯周治療スペースを充実させること、相談コーナー、インプラント室、研修室、カルテ・スライド保管室、応接室等を新たに設置するとともに広い院長室つくることを設計段階で希望しました。それぞれの施設の利用状況ですが、

(1)予防・歯周治療スペース
 予防・歯周治療を行うための、つまり衛生士が自ら行うことが許されている治療を心おきなくできるチェアーを2台作り、来るべき予防時代へのシフトをスムーズにできるようにしています。現在4人の常勤衛生士がいますが、10年後に彼女たちが休みなくこのスペースで活躍する姿を頭の中ではっきりとイメージできます。
(2)相談コーナー
 エキスパンションプレート、バイオネーター、MUH、ビムラー装置、トレーナー、3D装置、DBSの模型を置き、主に歯列育形成、咬合誘導のコンサルテーションを行う場所として、またキャディアックスコンパクトを利用して顎運動記録等に利用しています。一年前からすべての患者さんに一眼レフのデジタルカメラで口腔内写真を撮影して診療情報を提供したり、パノラマとセファロのX線写真をデジタル化したりとデジタル化の推進も順調に進んでいます。
(3)インプラント室
 インプラント室は通常の診療スペースと完全に隔離し、充実した滅菌体制のもと月に数ケース行っています。隔離されているが故に決して冷たい感じの部屋にならないよう、壁一面に暖かみのある木を貼って患者さんの気持ちを和らげるように配慮しています。約2年経ちましたのでそろそろ元が取れたのかなと思っています。(笑)
(4)研修室
 研修室は月1回スタッフのための研修会やスタッフミーティング、スタディーグループの研修場所に開放。他の医院からスタッフ総出で見学にこられることがありますが、その時にはちょっとした講話やセミナーを行ったりもします。
(5)カルテ・スライド保管庫
 今後急激な資料増加が予想されるため、余裕のあるカルテ・スライド保管室を設置しました。
(6)応接室
 院長室が雑然としていても、来客に対して慌てないように応接室を利用しています。
(7)院長室
 今や医院にパソコンだけで6台。増える一方のデジタル機器や専門書の設置場所確保のためと仮眠するための「畳スペース」を設けたため、相当広い院長室になってしまいました。診療室とは別の有線放送を聞くことができるように、チューナーと音のよいスピーカーでヒーリング院長室のできあがり。(「このくらい贅沢してもいいんじゃない?」)

 あくまで私見ですが、多くの歯科医院が予防だけで経営を安定させることができる時代が来ることは、私が元気なうちには難しいと思います(○○先生ゴメンナサイ!)。では、生き残る歯科医院となるためには何が必要なのでしょう。私は自信をもって

  • 機械的な咬合理論ではなく、生体のバランスを考慮した咬合理論を習得し、ルーティンに実践できること
  • 機能矯正治療を含め質の高い矯正治療の引き出しを多く持つこと
  • 咬めることのみならず、審美的なインプラント治療ができること
  • 『予防ができる歯科医院になる』ではなく洗練された予防システムを早期に確立すること

と考えます。
 これは私の考えですので、皆さんは一人一人が5年、10年先を考えて独自の戦略・戦術を練る必要があります。実践するためにハード(場合によっては私のように増改築が必要になるかもしれませんが)の購入も必要となることがあるでしょう。この激動の時代に長期間隆盛を誇ることは大変困難なことですが、先生方が将来にわたって、いわゆる「勝ち組」でいられるために今日のセミナーが少しでもお役に立てればと思います。

財産を賢く生かす

 さて、プロローグが終わり、ここからが講演の本番です。今日は経営の話ですから、まずは経営に役立つ心構えの話から入ります。
 有形の財産を考えると (1) 時間 (2) 人脈(成功する人にはこの人脈が豊富です)(3) エネルギー(行動なくして成功なしという意味でエネルギーは非常に大切)最後に (4) お金 が挙げられますが、これらの財産を賢く生かすことが『成功』の能力を高めるといわれています。よく友人から「君の趣味は歯科治療だろう」と言われるのですが、私は常々「歯科医師を早く辞めたい」と思っています。歯科治療は非常にエネルギーを使います。予約通りに来院された患者さんを待たせないようにしなければならないし、それでいて、常にハイレベルな歯科治療を心がけなければならないわけですから「ストレスはない」といったら嘘になります。確かに患者さんの笑顔を見たり、その人が治療を通して健康な方向へ向かえばストレスは緩和されますが、全くのストレスフリーは無理でしょう。このストレスと上手につきあいながら、にこにこして早い時期に引退したい(ハッピーリタイアメント)。そのためには余裕のある貯蓄が必要で、引退時に必要である貯蓄額から逆算した、●段階的な預金と、●リスクを取りながらの資産運用が必要となります。
 お金の管理法ということについて、ファイナンシャルアドバイザーのスージー・オーマンは「自分自身と自分を愛してくれている人たち、そして自分のお金を本当に大事にするようになった時、あなたは自分のお金をコントロールできるようになる。そしてその結果、自分の人生をコントロールできるようになる。」と言っています。お金の話をすると何となく汚いと言われがちです。「よい仕事をしていればお金は後からついてくる。」あるいは、「よい治療をして精神的に満足し、そこそこの収入があればいいじゃないか。」などと言われるかたもいらっしゃいますが、私は違うなと感じています。【開業したからには意識をして儲けなければならない。その儲けたお金をもう一度患者さんに還元して、つまり、器械・材料(ハード面)や優秀なスタッフの確保(ソフト面)に十分につぎ込むべきだ】というのが私の考えです。
 私はお金については完璧に素人なので、3人のプロの方に任せています。きちんと収益をあげさえすれば、

  1. 借金や事故に対するリスクマネージメント(保険
  2. せっかく入ってきたお金が必要以上に出ていかないように節税(会計事務所
  3. ペイオフの時代に資産を分散し、さらにリスクを取りながら運用していく(資産運用

それぞれの専門家が私の周りを囲んでくれる形にしていますので、現在稼いできたお金に対する不安は非常に少なくなっています。

成功を望むことが成功への第一歩

 成功している人、そうでない人、現在業界を問わず完全に二極化されてきたと言われていますが、今や歯科界も例外ではありません。様々なプログラムや「成功」に関する本を読むとだいたい書いてあることは同じです。まず、「成功を望むことが成功への第一歩」。成功を望んでいない人などいないと言われるかもしれませんが、熱烈に望んでいない人は多いのです。「願望のスパークを感じたときにあなたの成功のゲームが始まる」と言われています。成功者はいつも心の中でなりたい自分のラフスケッチを描いており、反対に将来の自分が想像さえできない人には成功は覚束ないのです。
 非常に大切なところなのですが、「なりたい自分」を即座に思い浮かべてくださいと言われてもなかなかできるものではありませんので、正直に書き込んでいくだけで自分のなりたい姿・あるべき姿や自院の進むべき方向が浮かび上がってくる、つまり効果的な戦略を立てるときに大変役立つシートを作成しております。エネルギーのいる作業ですが、避けて通ることのできないプロセスですので多くの先生に活用していただきたいと思います。尚、これは私が自分ですべてを考えたものではなく、あるプログラムのシートを歯科用にリフェースしたものです。
 話は戻りますが、誰もが成功したがっているのなら、成功しない人がいるのはなぜか?重要なことですが、「成功をつかむことができるのは、成功したいという勇気と信念を持つ人だけだ」という事実を誰もが十分に理解していないということです。本当に成功したいと思っているかどうか。船を例にあげて考えてみましょう。「船をもてたらいいな」と言った場合、表現として受け身であり、漫然とした望みです。それに対して「船がほしい」そう言えば、あなた自信を願望の持ち主として位置づけることになります。成功のエンジンを始動させるキーはあなた自身が願望の持ち主になることなのです。「ハードレーザーが絶対欲しい」「インプラントを毎月3本埋入するぞ」など真剣に望んでいると不思議なほど現実となるものです(ピグマリオン効果)。

[構成 編集部]