歯科界へのメッセージ

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コムネット会員情報誌「Together」に掲載している、弊社社長・菊池恩恵によるコラム「TRIANGLE」です。

科学者としての責任

●「2011年」という年を忘れないで

足早に2011年、平成23年が幕を下ろそうとしています。会員の皆様には今年1年の診療活動、医院経営、また社会活動に奮闘されたにことに対し心より敬意を表するとともに、コムネット・デンタルサポートをご利用いただき、ご支援を賜りましたことに心より御礼申し上げます。
また、東日本大震災に被災された方々、今なお原発の放射能汚染の下で、この先数十年から百年の単位での苦難に直面されている方々に対して、改めてお見舞い申し上げるとともに、この「2011年」という年に起った出来事を決して忘れず、日本と日本人が等しく被った苦しみとして、復旧復興のために最後まで応援し、ともに尽力したいと思います。

●児玉龍彦教授「満身の怒り」表明!

東日本大震災で、私たちは胸に迫る多くの言葉に接しました。そのひとつが、衆議院の参考人として「放射能の健康への影響」について語った東大アイソトープ総合センター長で医師の児玉龍彦教授(58)の言葉です。それは、福島原発から放出された放射線の総量が、熱量換算、ウラン235換算いずれにしても原爆の20〜29.6個分に相当し、チェルノブイリ事故に匹敵する極めて重大な事態が進行しているのに、国も東電もそれを公表せず、枝野長官は「さしあたって健康に影響はない」と繰り返すばかり。そして一刻も早く現地で放射線量の測定をすべき時に、しかもイメージングベース(画像)でスピーディーに測る装置が開発されているのに政府は何もしない。それに対して児玉教授が、「30日たってもまったく何も行われないのはなぜか、満身の怒りを表明する!」と声を震わせて叫んだのです。

●子どもと妊婦が危険にさらされている

児玉教授が怒りをあらわにしたのは、医師としてそれもアイソトープの専門家としての危機感からです。放出された原爆数十個分の放射線による健康被害(内部被曝)の危険性が、とくに成長期の子どもと、胎内に新しい生命を宿す妊婦に対して極めて大きいことを知らせることが、「専門家としての責任」と自覚しているからです。逆にいうと、一般にはそれが知らされていない。深刻な現実から目をそらし「危険性はない」「プルトニウムは食べても大丈夫」という類の「科学者」が少なくないからです。そうやって日本の原発開発の旗振り役を担ってきた「科学者」への痛烈な反省の言葉といえます。

●「専門家」としてなすべきことは

児玉教授は、放射能汚染に警鐘を鳴らし国と東電を追及するばかりでなく、ほとんど毎週、福島県南相馬市を訪れて幼稚園、保育園の校舎や庭、遊具など、周囲一帯の放射線測定や除染活動を行っています。苦悩している現場に行って「一緒に測って、一緒に除染することが大事」と考えるからです。氏は、新聞のインタビューに答えて「専門家の務め」の4原則として、語っています。(1)知っている知識は正確に伝える。(2)それをわかりやすく理解してもらえるようにする(数値がいくつ、というだけではなく)。(3)しかし、だからこうすべきと強制しない。(4)自分たち(科学者)の意見と住民たちの希望が違った場合には、住民の希望を尊重する。自分の意見を優先させたり、押し付けたりしないという原則です。

●誰のため、何のための情報・科学か

本誌7月号で、震災後全員避難を強いられた福島県飯舘村の菅野村長の「もっと思いやりのある情報を望む」という言葉を紹介しましたが、政治家、官僚、大企業、科学者も含めて、国民の信託をうけて、権力(政治)や知識、お金を動かす立場にある者(選良)の第一の責務は、それによって大きな影響をうける人への権利と利益を最大限に守り、意思を尊重することにあるのです。
上記児玉氏の「4原則」をみて、私たちが歯科医療で推進している患者さんとのコミュニケーション、インフォームド・コンセントと同じ原則だと感じられると思います。医療現場も同じです。1年の締めくくりに、それも東日本大震災の年の年末を迎えて、科学の一分野としての歯科医療が児玉氏の思想と行動から学び、教えられることがたくさんあります。とくに、人間に向きあう真摯な姿勢を肝に銘じて、新しい年に向かっていきましょう。

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