歯科界へのメッセージ

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コムネット会員情報誌「Together」に掲載している、弊社社長・菊池恩恵によるコラム「TRIANGLE」です。

歯科界改革の旺盛な議論を

日歯事件を攻勢的に乗り越えるために

●「橋龍に1億円」検察捜査「本丸」へ

 猛暑の続く日本列島に、また衝撃がはしりました。7月15日、東京地検特捜部は吉田幸弘元衆議院議員を逮捕、日歯の臼田、内田両容疑者を再逮捕しました。吉田氏は日歯連からの「政治献金」5千万のうち、3千万を還流させ、臼田氏はそれを日歯会長選挙の買収資金に流用したとする「業務上横領」容疑です。
 参院選終了を受けて、疑惑の舞台は中医協から政界へと移り、捜査の手も「本丸」へと突き進んでいます。愛知県議ら8人が逮捕され(28日)、さらに臼田氏から直接1億円の小切手を受け取ったとされる「厚生族の首領」橋本龍太郎元総理への追及が疑惑糾明の焦点となっています。日歯連の政治献金は、「政治資金収支報告書」(訂正前)に記載されているだけでも、2000年からの3年間に、21億円が百人を超える国会議員に配られていたことが判明しています。カネにまつわる「底なし」ともいえる実態を国民はどのようにみているのか、本誌は今月も各紙の「社説」特集を組みました。梗概だけでもぜひごらんいただきたいと思います。

●「医科との格差是正」が理由になる?

 先月号の本欄「歯科ルネッサンスのために」に対して、様々なご意見をいただきました。反論のひとつに「日歯は、医科に比べて低い歯科の診療報酬の格差を『か初診』という手段で是正させようとした。その目的に触れないのは片手落ちではないか」という意見がありました。日歯の井堂会長の「目的は間違っていなかった」という言葉と同じ文脈で読むことができるでしょう。
 私たちも、歯科側の主張、医科との格差に対する不満はもちろん理解し、共感しています。歯科こそが全身の健康の源でありカギを握る「健康の根幹」だということが、もっと広く政治、行政の世界でも評価されるべきである、と切に願っています。しかし、医科との格差是正は、合理的な裏づけによって、その重要性が理解されてこそ実現するものです。国民に理解、納得してもらう努力が先決で、それもせずに「政治」の裏舞台の取引(カネ)で解決しようとするやり方自体、科学者の団体として失格です。
 仮に、前述の21億を国民の啓発事業や宣伝活動に使う、先進医療を支援する、あるいは歯科医療に恵まれない人々に対する支援のために使うとしたら、歯科医師会や歯科医療そのものに対する理解と支持が広がるでしょう。少なくとも真摯な姿勢は伝わるはずです。

●歯科界改革の議論をもっと旺盛に

 こうした事態に対して歯科界の論調はまたしても極めて低調です。残念なことです。そのなかで『新聞クイント』のコラム「萬人一語」は「日歯のあり方を『圧力団体』から『学術団体』に変えていく必要がある」と提言し、注目されます。「政治取引に血道をあげるようであれば、日歯の存在は国民に認められないであろう」「『学術団体』としての立場から歯科医療改革案を作成し、学術的根拠をもったうえで厚労省と渡り合っていただきたい」という論旨は正鵠を射ています。
 いま必要なことは、もっと旺盛に議論をたたかわせることです。歯科界が、みずからの力で、真相究明にとりくみ、自浄能力を高め、これからの歯科界のあり方、医療行政のあり方に対する明確な展望とビジョンを掲げて前進することです。
 今回の事件は、旧い枠組のなかで、起るべくして起った事件であり、「構造的危機」といえます。ここからどのような教訓を汲みあげ、歯科の展望を切り開いてゆくのか、日本の歯科医師の真価が問われています。コムネットは、皆様とともに、攻勢的に、この危機を乗り越える道を模索してまいります。
 がんばりましょう。
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