歯科界へのメッセージ

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コムネット会員情報誌「Together」に掲載している、弊社社長・菊池恩恵によるコラム「TRIANGLE」です。

臼田日歯会長逮捕!

中医協贈収賄事件が意味するもの

●04・4・14 激震歯科界をはしる

 強制捜査から2ヵ月半、ついに日本歯科医師会(日歯)・日本歯科医師連盟(日歯連盟)の臼田貞夫会長ら歯科医師4人が東京地検特捜部に逮捕されました。中央社会保険医療協議会(中医協)の支払い側委員の下村健元社会保険庁長官ら2名に「かかりつけ初診料」(か初診)の算定基準を緩和してもらえるよう200万円の賄賂を贈ったとされる容疑です。
 歯科医師6万4千人を擁する公益法人「日歯」の会長、同時にこの3年だけでも「国民政治協会」に15億もの政治献金をしている最大の自民党スポンサーである「日歯連盟」のトップ臼田会長の逮捕という事態は、まさに前代未聞、医療と社会保険制度の根幹を揺るがす日歯100年の歴史上最大の事件です。本誌「歯科記事抄録」特集のように、各紙は一斉に「国民への背信行為」「患者への裏切り」と社説で厳しく追及しています。

●「かかりつけ初診」変節の背後に

 問題の「かかりつけ初診料」が登場したとき、私たちは「患者さんへの説明の時代が到来した」と評価し、診査と治療計画を、できる限り詳しくかつわかりやすく説明できるツールを開発し、情報提供を促進する企画を考案しました。ところが、一般にはインフォームド・コンセントに不慣れな歯科医院も多く「か初診」申請率は01年で10%、210億という水準でした。それでも、模型や写真を使い、治療計画を提示することは、時間はかかっても、患者さんの治療に対する理解を深め、信頼関係を構築する上で不可欠のものでした。
 ところが、02年2月20日の中医協でその「ハードル」を下げ、簡単に申請、算定できる今の方式に改められたのです。それは「算定」のみを目的とした形骸化以外の何ものでもありませんでした。「日歯から、簡略化したのでどんどん算定するよう指示が出ている」という声を何人ものドクターから聞き、愕然としました。結果、02年「か初診」は一気に前年の5倍、1,070億円に跳ね上がりました。その背景に、診療報酬問題で利害が対立する支払い側委員へ日歯側からの切り崩しがあったのです。今回暴かれた診療報酬をめぐる舞台裏の癒着の構造、「診療報酬を金で買う」構造に、国民は「患者不在」を看破したのです。

●「国民・患者不在」が裁かれる

 この事件は、第1に、公正中立であるはずの「中医協」そのものを歪め、医療行政の信頼と権威を失墜させました。第2に、歯科医師が2兆6千万の歯科医療費を、他でも同じように裏取引で手に入れているのではないか、という「医療不信」を増幅させています。第3に、患者さんへの説明と同意という、もっとも大切な治療の前提を、自らの手で空洞化し、汚したということです。総じて、患者不在、国民不在という厳しい批判を免れないでしょう。
 すでに、連盟からの脱退や会費納入を凍結する動きも現れていますが、「か初診」をめぐって、批判の矛先が現場の歯科医師、医院にも及ぶことも考えられます。日歯の組織としてはもちろんですが、個々のドクターにも今回の事態について、また「か初診」についての十分な説明が求められます。コムネットにも15日付で日歯の会長代理から声明が送付されました。文面には「この事態を厳粛に受け止め国民の信頼を回復すべく」という文言をうたっていますが、いままずやらなければならないのは、自ら疑惑を徹底調査し、会員と国民に説明することです。
 また、今回の事件は、日歯・日歯連盟による政界工作の疑惑に端を発しています。捜査は参議院選挙をにらみながら、政治家、「本丸」へと進んでいます。その全容解明を率先してすすめることが、信頼回復への第一歩に他ならないでしょう。歯科医師会員のみなさん、そして、患者さんとともに歩むドクターのふんばりを心から期待します。
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