歯科界へのメッセージ

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コムネット会員情報誌「Together」に掲載している、弊社社長・菊池恩恵によるコラム「TRIANGLE」です。

Evidence-baced Medicine

「信頼の歯科医療」実現めざず診療ガイドライン

●事実・根拠に基づく診療

 1999年2月の「日本歯科人間ドック学会・学術大会」の特別講演で、渡邊達夫岡山大学教授は「歯科人間ドックの未来」と題してEBM( Evidence-based Medicine : 事実に基づく医療)を紹介し、参加者の共感を集めました。
 「歯科人間ドックが市民権を得るために、(1)マーケティング理論の真髄を歯科医療に生かす。 (2)市民に信頼される歯科医療を提供するために、OBP (Opinion-based Practice)の教条主義から脱皮して、事実や証拠に基づく医療を実践することが求められている。」「歯科人間ドックの健康志向を定着させるためには、市民がそのメリットを肌で感じる必要があり、メリットを感じてくれたら、人は集まる。」と《患者が納得できる診療の質的向上》を提起しました。

●日本でも具体化に急ピッチ

 EBMは、近年欧米で成果を上げ、日本でも具体的な準備が始まっています。厚生省は昨年「医療技術評価推進検討会」を発足させ、本年3月23日、報告書を発表しました。「報告書」は「望ましい医療の実施のためには医療技術評価とそれに基づいた『正しい医療技術』による医療の実践が必要」として、EBMを次のように定義しています。
 EBMは、(1)利用可能な最善の科学的根拠、(2)患者の価値観及び期待、。(3)臨床的な専門技能 という3つの要素から成り立ち、「診ている患者の臨床上の疑問点に関して、医師が関連文献等を検索し、それらを批判的に吟味した上で患者への適用の妥当性を評価し、さらに患者の価値観や意向を考慮した上で臨床判断を下し、専門技能を活用して医療を行うこと」である、と。
 つまり、最善の科学的根拠をもとに医療技術の選択を判定し、判定された技術を現場で活用する。そして治療の結果を評価する、ということです。むろん、現在でも同様の立場で診療活動をすすめているドクターも多く、その総合的で全国統一的な基盤とガイドライン作りが開始されようとしているのです。

●公平に、患者に根拠を明示する

 患者さんにとって、EBMのもたらす恩恵はきわめて大きなものがあります。全国どこでも同じ診断、同じレベルの治療が受けられることが期待できます。また、患者さんは自分の口腔状態や治療方針について科学的な根拠が明示されるため、自分の病気を十分に理解し、治療法を選択することができるようになるでしょう。
 これが、医療者と患者の相互信頼の実現にとって、極めて大きな貢献となることは疑いありません。それによって、患者さん自らが、健康をまもり育む主体者、主人公として行動する励ましを与えることになるからです。冒頭で紹介したように、適切な情報を得、「肌で実感できる」診療に出会うとき、患者さんは変わるのです。歯科における「医療技術評価」と「治療ガイドライン」策定作業を期待をもって見守りたいと思います。
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