歯科界へのメッセージ

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コムネット会員情報誌「Together」に掲載している、弊社社長・菊池恩恵によるコラム「TRIANGLE」です。

「かかりつけ歯科医院」

2016年診療報酬改定のツボ

4月からの診療報酬改定の詳細が発表され、連日「かかりつけ」の文字が新聞紙面を賑わせました。日本の医療全体の方向が、従来の「病院完結型」から「地域完結型」へ、「医科歯科多職種が連携して推進する在宅医療」の方針がより明確に示されました。医療全体が、3年前から進められてきた在宅・訪問・リハビリへの転換をさらに明確にし、医療を担う中心に「かかりつけ」を位置づけたのです。それは、超高齢化と国民医療費40兆円という問題を解決するためにも必要な根本的な転換と考えます。

かかりつけ機能強化歯科医院

今回新設された「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」、その定義は「歯科疾患の管理が必要な患者に対し、定期的かつ継続的な口腔の管理を行う診療所」であり、複数の歯科医師がおり、高齢者の口腔機能に関する研修を受け、緊急時の対応を行う体制があること、等の「必要な基準に適合し届け出をしたもの」という条件が付帯しています。

ちなみに日本医師会は「かかりつけ医」を「なんでも相談できる上、最新の医療情報を熟知し…(中略)…身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う幅広い総合的な診療能力を有する医師」と定義しています。歯科も同様に、「食べる支援」を軸に総合力をもった「かかりつけ」医療を担うアクションが求められています。

「か初診」の苦い歴史を超えて

同時に、私たちは歯科の苦い過去を忘れてはなりません。2000年の診療報酬改定で「かかりつけ」の重要性が注目され、「かかりつけ歯科医院」になると「か初診」に270点(2004年に274点)が算定されたのです。患者への説明と情報提供、治療計画をしっかり行うというものでした。しかし、当時の日歯が基準の緩和を狙って社会保険庁に贈賄工作をかけ、その結果2002年から基準が下げられ、書類だけに形骸化された「かかりつけ」に愕然とした歴史があることも記憶しておきたいと思います。2004年臼田貞夫会長以下幹部4人が逮捕され「日歯100年の歴史上最悪の事件」といわれ「か初診」は2006年に廃止されました。

「かかりつけ」で寿命が伸びる!

いま首都大学の星旦二教授の研究が注目を集めています。それは「かかりつけ歯科」を持っている人は持っていない人より寿命が長いという調査結果です。星氏は「2001年から開始した1.3万人の追跡調査によって『かかりつけ歯科医をもつ』人ほど寿命が延びるとともに、要介護にもなりにくいことが明らかになりました」と語っています。「頼りになる歯科医師、歯科衛生士による、自分自身による日々のセルフケアと、専門的な口腔ケアにより、QOL(クウォリティ・オブ・ライフ)が向上し、結果的に健康寿命の延伸に繋がることが、ほぼ明確になったのです」と。制度としては今が出発点です。「かかりつけ」が真価を発揮するには、これから地域の医科や介護、リハビリ、福祉など多職種との連携「地域のチームワーク」で在宅患者を支える体制づくりが不可欠です。なかでも歯科の「食支援(栄養支援と摂食嚥下)」の実践が求められており、大きな広がりと可能性をみせています。患者さんと地域に寄り添い「生きることは食べること」を実践する「かかりつけ歯科医」の出番です。

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