歯科界へのメッセージ

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コムネット会員情報誌「Together」に掲載している、弊社社長・菊池恩恵によるコラム「TRIANGLE」です。

自分が受けたい歯科医療

●保険診療・現場のジレンマ

コムネット会員の歯科医師の方々と話をすると、よく「私は、自分が受けたい治療、自分の家族に行う治療を、すべての患者さんに行いたい。しかし、今の『健康保険』の制約のなかではそれができないのがジレンマです」という言葉を耳にします。そのジレンマには3つの側面があります。ひとつは「健康保険」といいながら、給付されるのは「病気を治療していくら」という「疾病保険」の原則です。「予防が一番」という国民全員が一致できる理念を掲げながら、いつまでたっても「Drill Fill Bill」の繰り返し(やり直し)の治療からなかなか脱却できないという悩みです。

●病気の原因物質で治療?

2つめが、先進国ではアレルギーや発がん性が疑われ、使用制限や排除の勧告が出されている修復の材料(アマルガムやパラジウム、ニッケルクロム合金など)が、日本ではいまだに保険治療で認められている金属である、ということ。例えば、ドイツでは保健省が「幼児および妊婦向けには水銀・銀アマルガムや、銅を含有するパラジウム合金を使用しない」と勧告を行っています。自分や自分の家族の治療を行うときに、このような金属で治療する歯科医師がどれだけいるでしょうか。「金パラ」は、戦後の経済復興途上の1960年に日本の経済力からみて「代用金属の使用もやむをえない」として認められたもので、早期に金合金に移行するよう勧告されていたものなのです。

●説明する時間がない!!

3つめには患者さんとコミュニケーションを深める時間がない、という悩みです。歯科の評価(診療報酬)が極めて低く設定されており、保険診療だけでは充分な治療や説明ができない現実があります。日本の治療費は先進7カ国の中でも最低の水準です。例えば(2002年の資料ですが)根管治療が、米10万8千円、イギリス9万2千円なのに、日本では5千8百円。また金属冠は、同じく米11万1千円、英10万9千円に対して、日本は9千百円に過ぎない。これでは、チェアタイムを30分にしたり、カウンセリングに時間を費やす余裕はありません。それこそ患者さんを「こなす」診療で精一杯なのです。

●やっぱり「予防がイチバン」

しかし、こうした歯科の現実を「仕方がない」と諦め、受け入れるのではなく、患者さんのためにも、医院のためにも、そして一緒に働いているスタッフのためにも、みんながよくなる「自分が受けたい歯科診療」実現のために、いかにしてこの現実を突破してゆくかを考えていきましょう。はたしてそれは可能なのでしょうか?
不可能ならば歯科に未来はありません。私たちは「輝く歯科の未来」を確信しています。それはなぜか?視点を変え、立ち位置を変え、ターゲットを変えて、行動を変えれば、必ず変えられるからです。
まず最初に、ジレンマの元凶である「治療中心」の考え方を「予防」に転換しましょう。誰しも、痛くなって歯科医院に駆け込むのは嫌なものです。「病気を未然に防ぐ歯科医院」の旗を掲げましょう。予防の医院づくり、システム作りには時間と努力、何よりも院内一丸となったがんばりが求められます。まずは「定期的に来院してプロのケアを受けていただければ、虫歯と歯周病からあなたをお守りします」というメッセージを発信することから始めましょう。来院する垣根をできる限り低くすることが肝心です。

●「治療」ではない「価値」を!

積極的な予防によって、患者さんにも、医院にも多くの侵襲とリスクを伴う「治療」の従来の枠組みを越えて、ほんとうに、「自分自身が受けたい」歯科医療に向かってステップアップさせましょう。保険制度の枠、限界を説明して「百年河清を俟つ」のではなく、自由診療の訴えをしましょう。それは、歯科の「新しい価値」、「美」と「健康」をターゲットにしたチャレンジです。「咬み合せ」「姿勢」「ホワイトニング」「口臭」そして「食育」「栄養指導」「サプリメント」等々、テーマは山ほどあります。私たちは、その先にこそ、歯科の明るい未来があると考えています。口腔をつうじて、全身の健康と人々の幸せをめざす「新しい歯科医療」への出発を応援します。いつからでも、どこからでもスタートが可能です。

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