歯科界へのメッセージ

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コムネット会員情報誌「Together」に掲載している、弊社社長・菊池恩恵によるコラム「TRIANGLE」です。

8割の人なぜ来ない?

●83.3%が「治療受けていない」

またまた、歯科医療関係者にとっては「う〜ん」と腕を組むような調査結果が出た。日本歯科医師会が今年7月に行ったネット調査(1万4千人)によると、「歯や口腔に異常を感じる」人が全体の55%と半数以上を占めながら、そのなかで治療を受けている人は16%にとどまり、何らかの理由で受けていない人が8割(83.3%)にも上っている。(内訳は「中断」が1割、「治療していない」が7割)。日本の医療を「予防」「美と健康」にシフトするためにも、まずはこの8割の「潜在患者」へのアプローチ、受診障壁をなくす努力が求められる。今回の調査を元にその可能性と課題を考えたい。

●受診は「痛み・はれ・出血」して

トラブルを抱えながら受診しない理由はなんだろう? 「ひどい状況ではない」「受ける必要がない」「時間がない」。中断の理由も同様に「悪いところがない」「治療が終了・病気が治った」「ひどい状況ではない」という自己診断が上位に並び6割を占めている。(しかし現在の経済状況下、歯科治療が「後回し」になっている現実も見逃してはならない。)

ならば、受診する理由はどうか。「痛み・はれ・出血があったから」「過去に治療した箇所に不具合が生じたから」「歯が欠けた・折れたから」という、具体的に痛みや支障が出てから歯科医院を訪れる従来の受診パターンが全体の9割で支配的である。また、「受診の目的」(複数回答)では「むし歯の治療」が61.8%でトップだが、続いて「歯石除去・クリーニング」(32.2%)、「歯や口のチェック」(15.8%)と能動的な目的が増えていることに注目したい。

●「上手・対応・時間・説明」に満足

最近かかった歯科医院の満足度は、最も評価が厳しい30代男性で「たいへん満足」+「まあ満足」が69.7%。最も高い70代男性(84.9%)まで、概ね7〜8割が満足と回答している。その理由をみてみよう。(1)ドクターの治療が丁寧で上手(45.2%) (2)受付・スタッフの対応が良かった(42.0%) (3)予約時間が正確・待時間ゼロ(38.9%)は予想通りと思われるが、次に(4)治療前に歯科医師が治療方法をわかりやすく説明してくれた(31.8%) が続いている。さらに「医院の清潔な雰囲気」「口腔ケアや予防のアドバイス」「保険と自費の違いを説明」「治療費の説明」等、説明・情報提供を評価する回答も多く、コミュニケーションの「質と量」が「満足度」アップには不可欠の要素であることを教えている。

●「技術・治療費・説明」に期待

では「歯科医師・医院に対する期待・要望」はどうか。(1)治療技術が高い(67.3%) (2)治療費の負担が低い(61.7%) (3)治療が痛くない(51.5%) (4)わかりやすい説明(44.9%) (5)治療期間・回数が短い(42.9%) 上位に並ぶのは、常連の「うまい・早い・安い・痛くない」である。うなずける面もあり、患者のわがままと感じるところもあり複雑だが、これが現実である。

平成10年版の「厚生白書」が「医療はサービス業」と明記して久しいが、Together 195号のInterviewで古宮氏が語っているように、「医療」は一方的な客商売ではなく、医療者と患者の相互信頼、相互努力で健康な生活を築き上げるものである。「歯科医師・歯科医院への期待」のなかで「わかりやすい説明」が4番目に登場しているが、実は、この「説明」や「情報提供」「アドバイス」というコミュニケーションが、8割の「来ない人」へのアプローチにとって、一番求められていることなのだ。

●ためらわず、アプローチしよう!

なぜなら「医院選択」において、また「治療選択」において患者、国民には圧倒的に情報が足りないからである。高い治療技術の医院を希望しながら、どの医院がどんな治療をしているのかわからない。治療内容も、費用も、痛みの有無もわからない。だから不安なのだ。結果「通いやすい」「近所だから」で選ぶことになる。受診をためらう要因の「不安」「情報不足」に対して、歯科医院の側から、臆することなく声をかけ、働きかけを始めること、それが壁を突破する第一の課題である。

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