歯科界へのメッセージ

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コムネット会員情報誌「Together」に掲載している、弊社社長・菊池恩恵によるコラム「TRIANGLE」です。

いのちと健康守る〈歯科の誇り〉

●日本は重大な「試練のとき」

地震に猛暑、豪雨と日本列島は厳しい自然の試練を受けています。同時に、燃料高騰とエネルギー問題、「食」の安全と自給問題、各地で頻発する凶悪事件など、国民を不安と恐怖に陥れる出来事が頻発しています。また、牛肉、鶏肉、ふぐ、うなぎ、と続く「偽装の連鎖」に私たちは「信じる」という言葉を忘れかけています。大分の教員採用贈収賄事件に至っては「不正があたりまえ」の世界。10年連続で自殺者3万人の1/3が60才以上という現実に「何かが狂っている」「これからどうなるのだろう」・・・。誰しもが日本の行く末に危機感を抱く猛暑の夏、「生きること」をめぐって政治の根本、そして個々人の意識と行動が問われています。

●4分の1が収支差額100万未満

歯科界も同様に試練が続いています。先月、厚労省は「医療経済実態調査」確定値(2007年6月)を発表。歯科診療所(個人立)の「医業収入」は1ヵ月345万5千円で、前回2005年比で8万9千円減少しました(1993年(453万7千円)から14年連続で減少)。収入から支出を差し引いた「収支差額」は122万9千円。この院長の手元に残るお金が月12万円(9%)減少しています。最多層は50万〜100万円、実に26.6%が「100万円未満」という結果です。「50万未満」も19.7%、「歯科医師の5人に1人が年間所得300万以下のワーキングプア」という「週刊東洋経済」(2007年6078号)の分析も決して空論ではないことがわかります。

●歯科は医療費の7.5%(2兆5千億)

年々減少する収入に、多くの歯科医師が不安とあせりを感じています。背景として、競争の激化、少子化、医療費抑制等の要因が存在しますが、根本的な原因は医療政策にあります。現在33.4兆円(2007年度)にのぼる医療費のなかで、歯科医療費は2兆5千万(7.5%)にすぎません。これでは、本来求められる歯科医療よりも「経営安定のため自費率向上」に向かうのは当然ともいえます。

しかし国が予防と定期管理に本腰を入れるなら、医療費自体が軽減されることも過去のデータから明らかなことです。今年、ある歯科大で受験者が募集定員に満たなかったという事態は、本来は希望に満ちた歯科医療が、若者たちにとっては夢を託し生涯をかける世界ではないことを示しています。

●歯科から「日本再生」の足がかりを

しかし「苦しい」「医療費を増やせ」と言っているだけでは事態は解決しません。この現実のなかで歯科がどのような役割を果たすのか、そのビジョンを提起することが不可欠です。軸足をどこにおいてがんばるのかという「歯科哲学」に基づくグランドデザイン、その策定が急務です。 私たちは、人の「いのち」を守ることを使命とし、健康増進のために尽力する医療のなかで、歯科は人間生活の根幹を担っているがゆえに、日本社会に対して、呼吸する・食べる・話す・笑うという「生きる原点」から、発信すべき多くのテーマを持っています。そしてそれは、殺伐としたこの日本をまっとうな国に立てなおす基礎となるものと考えます。

現在の「医療改革」が格差容認、弱者切捨てにほかならず、「命の沙汰も金次第」と厳しく批判される思想を根底にしていることは明らかです。それに異を唱え、「いのちと健康の歯科」を実践することは、日本を再生する足がかりを築くことになるのです。歯科の誇りをもってこの時代に挑んでまいりましょう。その王道を進むことが、患者さんとともに歯科医療の発展につながると確信します。

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