「パタカラ療法は万能療法みたい」との疑問にお答えします

●或るスタディーグループでのパタカラ指導料の扱い

 パタカラを患者さんにとても熱心に実践されているスタディーグループがあります。1回3,000円程度の指導料を頂いているそうです。とても多くの患者さんを指導されております。そんな話を聞かれ、疑問を感じた先生、なるほどそれはそうあるべきだと同感される先生と二通りだと思います。私は、同感する先生はパタカラだけでなく医療の本質が良く分かっている先生であると思います。問題は疑問を感じた先生です。

●パタカラは単なるプラスチックの塊…?

 或る女医さんが私にこういっておりました。「確かにパタカラは良い器具です。でも値段が高すぎる。」この先生は、自分の言っている言葉を自分で理解せずに喋っているのではないかと感じました。その方は、パタカラを単なるプラスチックの塊と考えているのではないでしょうか。
 価格を決める要件の本質は何でしょう。パタカラを表情筋に応用するまでの創意工夫の結果に対する知的価値?パタカラの効能を知って、これを悩める人に勧められる医学知識の集積努力?個々のパタカラを先生方の手元まで運ぶ商社員の生活保障?これらを総合的に考慮して価格は決まるのかもしれませんが、それらよりも価格を決める最大要因は、パタカラが悩める人に本当に有効か否かであると思います。

●価値観の問題

 カリスマ美容師はお客さんにハサミを使って幾らと請求しているでしょうか、そんな筈はありません。お値段は安価でしょうか、そんな筈はありません。1回何万円も支払いするそうです。このケースでは、その女医さんに何と答えるでしょうか。
 悩みがあって来院した方に、悩み改善のお手伝いをしてあげる私達の職種は、悩み改善が確実ならば患者さんが満足する範囲の料金を頂いても良いのではないかと感じます。医学知識を研修する、改善シナリオを考えて勧める、それよりも先に私たちも毎日生活していかなければならないのです。医師・歯科医師は霞を食べて生きているわけではありません。
 患者さんサイドから考えてみます。口呼吸で多くの疾病が起きています。カリエス、歯周病、口内炎や喉の病気は当然のことですが、睡眠時の口呼吸の代表であるいびきや無呼吸によって酸欠や睡眠ストレスが起こり、その結果高血圧や糖尿病などの病気が発症します。これらの疾病のためにどの位の医療費を患者さんは毎月支払っているでしょうか。月に10万円はかかっています。それがパタカラで改善するなら、どちらが安価でしょう。
 電車の中で若い女性が人目を気にせずに一生懸命化粧をしています。効果は別としても、使用している化粧品や道具、付属物、みなタダではありません。これこそが無駄で、もっと身体の芯から綺麗になることにお金をかける方が有益ではないでしょうか。

●興味ある会話

 先ほどの女医さんと審美歯科の大家といわれるM先生との、2年前の会話を紹介します。
M先生 「やっぱりパタカラでは審美的改善は無理でしょ?」
女医さん 「それが驚くほど短期間に効果が出るんですよ」
M先生 「そ〜?なの……」
 この会話は何を意味するか先生方は既にお分かりだと思います。「全く効かないということを期待して聞いた」のに、信じられない回答へのM先生の驚愕の言葉であったと思います。審美歯科の大家であるM先生は、「パタカラ」などという物で審美的改善が起きる等とは夢にも考えていなかったし、考えたくもなかったということです。
 それも、実際に起きている変化を見ていないから、信じてはいけないと思っていた。しかしパタカラの評判が気になっていたので半信半疑だったのかもしれません。
 ぜひご自分で確かめられたらいかがでしょうか。

●「老兵は死なず、ただ消え去るのみ」

 自分で検証もしない有名志向なトップに振り回されていると、歯科業界は必ず沈没です。表情筋が美容だけと思っているから、そこに思考の限界があるのだということに気がつかないのです。これでは、審美に限らず表情筋の全身に及ぼす影響領域もいずれ医科の先生方に奪われることになります。
 私は、当てに出来ない人に舵取りをさせていると、歯科の将来に、そして先生方全体に悪影響を及ぼしてしまうのではないかと恐れています。

●今は表情筋の黎明期です

 時代は後期高齢者が当たり前の時代になってきました。先日まで高齢化時代の到来が近いなどと騒いでいたことが嘘のようです。時代はアンチエイジングを診療のメインに据えて医院戦略を練らねばならない時代です。この時代に表情筋を扱うことがドン・ピシャリのテーマなのです。ヒトの過去からの歴史を知って、今の健康を守る術を考えて見ましょう。

●進化の背骨はミトコンドリアとの共生

 40億年以前の太古に単細胞であった我々の先祖が、偶然ミトコンドリアという細胞を自分の細胞内に取り込み「共生」できることになりました。その結果エネルギー利用が飛躍的に可能になり、我々の先祖は複数細胞組織へと進化できたのです。海中での魚類になるまでの基礎ができ上がったことになります。エラ呼吸を獲得することにより魚類として進化を遂げることになりましたが、さらに偶然、我々の先祖は陸上で生活することになり、酸素摂取がさらに効率化出来るように肺呼吸の獲得へと進化を遂げてきました。
 ここまでの話は、我々の先祖からの進化の変遷が如何にエネルギーを効率的に作り出し利用するかの歴史であったともいえます。これ等の進化はある面、大量の酸素を体内に取り込んでエネルギーを作り出してもらうために、細胞内のミトコンドリアに酸素を効率良く供給し続けることが出来るかをめぐる共存共栄の工夫の進化であったと考えます。

●ミトコンドリアDNA奇形が老化や癌化を招くのか

 ミトコンドリアにとっては酸素不足が続くと、ミトコンドリア自身のDNAが傷つきDNAの奇形を生ずることになります。今や、ミトコンドリアのDNA奇形が細胞や組織に悪影響を及ぼし、老化(脳神経細胞にとっては脳の萎縮)や臓器組織の癌化の根本原因ではないかとの説も有力になっております。

●新しい進化の背骨は顔面神経支配筋肉の発達

 人の進化を考える時には、三叉神経支配筋肉群と顔面神経支配筋肉群との峻別が必要です。進化の早い時期に、細胞複合体を支配する神経支配筋肉群の三叉神経支配筋肉群の基礎、いわゆる歯牙を含めた咀嚼機能は出来上がっています。それをコントロールしている中脳以下の「いわゆる下位脳」といわれる中枢神経系の概略がすでに出来上がっていたと想像できます。肺呼吸を獲得し陸上生活に適合できた我々の先祖は大繁栄をすることになりますが、大事なことは、この時点では現在のヒトになるまでの大脳が未発達だということです。人類に至り表情筋の飛躍的進化により、大脳の新皮質が大進化したのです。しかし、ヒトは産道を経て生まれるために、頭蓋の大きさはおのずから決まっております。決まった頭蓋の大きさの中で可能な限り大脳を大きくし、且つ、下位脳の機能を低下させない範囲で可能な限りコンパクトに整理されてきたと私は考えます。
 大脳と中脳以下の下位脳との関係は、解剖学的には直接関係しておりますが、間接的には大脳から運ばれてくる脳血流の流れる量によって下位脳は影響を受けると考えられます。脳血流の減少が大脳組織の萎縮に及べば認知症であり、下位脳にまで及べば「脊髄小脳変性症」等々の不治の病といわれる疾病です。そうならば表情筋をしっかり活性化することで改善が可能となるでしょう。

●霊長類=表情筋の歴史

 私達人類に著しい表情筋の発達が起きました。霊長類は表情筋の発達によって単に頭(大脳)が良くなっただけではありません。それは表情筋の発達状況によって、頭蓋骨から全身骨格や筋肉までも順次大脳皮質の発達に調和して姿勢を含めて変化しております。四足に近い姿勢のサルから、二足歩行に近い類人猿、そして何時も二足歩行をする我々人類、比較して観察すればお分かり頂ける様に、姿勢がいわゆる「正しい姿勢」と称される姿勢へと変わっております。興味深いことに、人類も高齢になり表情筋が衰えてくると前かがみの姿勢へと変わって参ります。表情筋と姿勢とには、深い因果関係があることを推測させます。

●健康構築には順序があります

 ヒトが獲得した表情筋の大進化が全身に及ぼす好影響を維持させるためにも、当然のことですが先ず表情筋そのものの活性化を維持し(脳血流を増加させることで脳神経組織の活性維持)、波及効果での睡眠中の呼吸量確保ができれば(ミトコンドリアの活性維持)、そしてその好影響で自律神経のバランスを保つことができれば、誰でも最大公約数的に健康は維持できると考えます。
 注意しなくてはいけないことは、表情筋そのものは細い・薄い・弱い筋肉です。ちょっと油断しているとすぐに、発育不全、萎縮、老化を起こし、表情筋としての「機能不全」をおこします。人であるために得た表情筋の発達に伴う身体的調和が崩れると、それが我々の身体的疾病といわれるものを引き起こします。表情筋をトレーニングしたらこんなことが治るんだと思わず、「表情筋の好バランスの上に人は健康を保てている」のだと考えましょう。