21世紀セミナーレポ vol.14 講演抄録 吉村禎治先生講演Part2 (最終回)患者様満足度向上のためのスタッフ自主型歯科医院づくり(3)

患者様満足度向上のためのスタッフ自主型歯科医院づくり(1)
患者様満足度向上のためのスタッフ自主型歯科医院づくり(2)
ミーティングの重要性
 当院では、注意事項やミス項目をシートに書いて専用の掲示板に貼っています。ミスは必ずでますし、結構みんな小さなミスをします。例えば、アポイント帳の記入漏れの例ですが、シートに「受付の方へ。キャンセルの連絡があった時は、担当ドクター担当衛生士に連絡後、カルテに赤か青で日付を記入してください」と書いて全員に見えるよう掲示します。他にも「スタッフの方へ。床にモップをかけた後、シンクで洗う時は基本セットなど洗い物がないか確かめてから洗って下さい。ある時は先にセット類を片付けてから、モップを洗って下さい」など、こんな単純なことを書きます。これを全員に伝えるのです。些細なことばかりの積み重ねですが、これを集めておいてコムネットさんにマニュアルにしてもらって、文章にしたものをまた全員に見てもらうようにしています。ですから本当に小さなことばかり書いてあります。「ワイヤレスカメラを使った後はカバーを電位水でふいて取り替えてください」とか、「レーザーを使用した人は線をのばしたままだと踏んでしまうのでまとめてください」とか、こんなレベルです。こういうことを積み重ねることによってだんだんつまらないミスがなくなっていくのです。
挨拶ひとつで仕事が変わる
 人は感情で動くと思うのですが、やはり医院も人間関係を基盤とした「やる気」「一体感」「意気を感じる」などの情緒的なことは非常に大切で、こういう雰囲気が医院に満ちてこないと、患者さんには伝わらないと思います。「ここの医院はなんか明るいね」とか、「スタッフがいきいきしているね」など、そういうイメージがないとだめだと思います。
 挨拶も大事です。挨拶の「挨」は開くという意味で、「拶」は迫るという意味なのですが、私はまず最初にスタッフに「きちんと挨拶をしよう」と言います。顔も見ないで「おはようございます」と言うのは、挨拶ではなくてただ来たことを知らせるだけなのです。どういう挨拶をするかというと、自分のために挨拶をするのだと教えています。気持ちよく挨拶するスタッフはこちらも気持ちよく受け入れられます。私はスタッフを見たら、先にこちらから声をかけるようにしています。人より先に挨拶する、挨拶は最高のレベルのものを提供する、という考えです。ですから暗い顔して目も見ずに「おはようございます」といわれても何も嬉しくないし、いきいきとした顔で元気よく挨拶してもらえればこちらも気持ちがいいです。スタートがつまずくと1日なんとなく憂鬱です。
医院にとって一番大事なのはスタッフ
 日常の中で院長がスタッフにかける言葉も非常に大切だと思います。こちらが忘れていたことや、仕事でカバーしてくれた時は「ああ、さすがやねえ」というような言葉や、「患者さんも喜んでいたよ」など、ちょっとした一言をかけるだけで、スタッフというのは気持ちがすごく晴れたり、やる気が出たりするようです。
 医院にとって一番大切なのはスタッフだと思います。一日中、家族より長い時間を一緒に働いているのですから、ギクシャクした関係は嫌なものです。ですからスタッフとはストレスのない関係、フランクな付合いをします。当院ではスタッフは家族の一員という位置付けをしています。ですから誕生日にはプレゼントをしています。去年はケーキを買って贈っていたのですが、結構かさばるし持って帰っても一人ではそんなに食べられませんので、今は商品券にしています。商品券3000円分を封筒に入れて、好きな物を買いなさいとプレゼントしています。現金にしようかとも思ったのですが、現金ですと財布に入れて終わりです。商品券だったら一応それを持って行って買うわけですから「あ、これ先生にもらったんだ」というので2度感動してもらえます。それから、スタッフが全員で色紙に「おめでとう」などのコメントを書いてプレゼントしています。それを読むとその人の人柄や、スタッフがその人をどう思っているかがわかります。ですから逆に私の知らないことを知る機会でもあります。「この子はこんなにすばらしかったんだ」とか、「この子は皆にこういうふうに思われていたんだな」という再発見ができます。
 医院にとってスタッフとは「人財」、財産なのです。単に何か手伝ってくれる手足ではなく、その人たちのおかげで医院が成り立っているのです。当院では、スタッフの交通費は1ヵ月分で40万円近くかかります。40万あったら多分材料代が出るんじゃないかと思うのですが、これは「もったいない」のではなく、「そんな遠いところからありがとう」という「感謝」なのです。あるスタッフは高速道路に乗って車で来ています。駐車代もかかります。また別の子は滋賀県から大阪まで来てくれています。1時間半以上かかると言っています。そんな遠くから通っていて続くのかなと思われるかもしれませんが、もう3年位勤務しています。「辞めないでずっと来てね」と言っています。彼女も「ずっとがんばりたい」と言ってくれています。
他業種に学ぶスタッフの心理
 ここでちょっと他業種に学ぶということを話したいと思います。当院にもアルバイトやパートの人がいますが、アルバイトをする人の考え方や気持ちを調査した資料があります。(法政大学経営学部 佐野ゼミナール『学生アルバイト意識調査』2003年度実施)
 「アルバイトの経験の中でお金以外に得られたものは何ですか」(Q1)という質問では、「働くことの大切さが分かった」「友達が増えた」「忍耐力が付いた」「お金の大切さを知った」この辺が上位を締めています。この「働くことの大切さ」というのは非常に多い意見です。アルバイトした中で得られるものに「友達」があります。当院もスタッフがすごく仲がいいと思います。私はほとんど行きませんが、スタッフ同士で飲みに行ったり食べに行ったり遊びに行ったり、そういう仲間意識が芽生えるからこそ続くのかもしれません。
 アルバイトに関して言えば、仕事に対して「甘い」です。言いたいことがいっぱいあるのですが、あまりいっぺんに言うとまず辞めます。
 「どんな時に嫌になって辞めようと思いますか」(Q2)という質問では、まず第一は「人間関係」です。ですから、院長とうまくいかないなと思ったら辞めたいと思うのです。しかしスタッフとは一緒にいたいなということで、2〜3年は続くと思うのですが、ひどい時はスタッフ全員が一度に辞めます。次は「仕事の内容と給料が割に合わないとき」です。要するに仕事がきついのに給料が安いなという場合も辞めたくなります。後は「シフトに自由がきかない」「評価が不平等」と続きます。当院は自己申告制で休みたい時に休めます。ただしその時は前もって言って、他のスタッフから了解を得て、そこにサポートが入れるようにして休みます。実は私も3月末から8日間休みますけど、その時は「僕休みますね」と宣言します。そして他のドクターに「僕のいない間頼むね」と引き継ぎます。ですからスタッフも結構長期で休みます。スタッフもたまには1週間くらいの旅行に行く時間的な余裕とお金がないと続きません。わくわく楽しい人生ではなく、働くだけで終わってしまう人生なんてつまらないです。今働いて老後に遊ぼうと思っても、多分遊べないです。ですから今遊ぼう、充実させようと思うのです。
 「辞める理由は『人間関係』。新人には『休憩』を、ベテランには『頼りすぎ』に注意!」という分析結果も出ています。特に勤め始めたばかりの子は、休憩がないといけません。当院は実習生が毎年来るのですが、朝4時間立っていたら今の若い人は倒れます。ですから途中で休憩を頻繁にとってあげないと、なかなか続きません。「つらい」のが先に立ってしまいます。また、ベテランには頼るし、注意しないとなんでもかんでもその子に頼んでしまいがちです。そうするとその子もストレスになってきて、パニックになってしまいますので、「頼られるばかりで評価されない」という不満が出てきてしまいます。
 次に、「理想の店長・社員像は?」(Q3)という質問ですが、「忙しいときにイライラしない」というのがダントツの答えです。私も経験がありますが、暇なときはいいのですが、忙しくなるとイライラしてくるのです。
 ですからこれはとても意識しています。ふだん無意識でやってしまうので、意識して忙しい時の方が気持ちをゆったり持つようにしています。そして「尊敬できるかどうか」というのがその次です。ですから、いいかげんなことはできません。当院は衛生士がメンテナンスをしていてちょっとフロスがひっかかったら「先生ここにちょっと段差があります」と言ってきます。それが仕事ですからシビアに見ていますので、我々もいい加減なことはできません。これはお互い様です。お互いの仕事の範疇で、仕事が出来ていない場合は衛生士に戻すし、衛生士はドクターに戻します。他の回答では、「トラブル時に冷静に判断できる」「コミュニケーションを図ってくれる」とあります。
ポイントは「やりがい」と「人間関係」
 「男女で異なるマネージメントの留意点は、男子は『スキル』『やりがい』、女子は『人』」となっています。私がみたところでも、男の先生は技術が学べるとか技術を学びたいという理由で仕事をしていますが、女性は人間関係を重視するようです。人間関係でその職場がいいかどうかを決める傾向にあります。ですから嫌な先輩がいたら辞めてしまうし、いじめられたら辞めてしまうのです。
 仕事が長く続く理由は、基本的にアルバイトもパートも正社員も同じです。相手の考えていること、気持ちをわかって初めて対処できるのです。
 給料とはスタッフにとって非常に大切なものです。例えれば血液のようなもので、生きていくために必要ですし、また成長のために必要なものです。私は評価として歩合をつけているのですが、そういうシステムも必要なのです。どんなに頑張っても今までと一緒だったら、それはやりがいがないのです。「これだけやって効果があったからこれだけ私も認めてもらえた」という実感が必要です。
 以下に、「一番長く続いたアルバイトとその理由」の調査結果を歯科医療の仕事に当てはめてみます。
   ・次のステップへ進む意欲が湧いてくる内容があるとやめない
   ・やりがいを感じたらやめない
   ・モチベーションが上がる
   ・仕事に責任が持てる
   ・患者様の喜ぶ顔を見て感動する場面がある
   ・勉強になる
   ・楽しい
   ・重要なポストにつける
   ・人に感謝される仕事
   ・面白くて、お金がよく、社会勉強になる
   ・腕が磨ける
 これだけのものが全部あれば、多分喜んで勤めていると思います。調査結果は一般の企業でアルバイトしている人の希望ですが、これらの意見を医院にどう取り入れていけるかがポイントです。難しいですけれども、スタッフが長く勤められる基準になるので考えてみてください。一つでも、うちの医院はこれが出来ている、うちに勤めてきたらこれができるよ、身につけられるよというポイントがあれば、スタッフも長く、やりがいを持って勤めてくれます。
医院の活気はスタッフが作る
 医院の活気はスタッフの活気です。スタッフにやる気がないと感じているなら、何がそうさせているのか、何がスタッフのやる気を阻害しているのかを考える必要があります。スタッフのやる気がでる医院体制になっているか、院長がその体制を作ろうとしているか、作るならどのようにして作るのか。スタッフはやりがいを感じているのか、もし感じていなければ何が原因かということを考えていただきたいと思います。
[構成 編集部]

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